パキスタンハイテク技術推進プラットフォームでは、パキスタンのテック産業・企業の魅⼒を⽇本の企業様にお届けしています。今回は、パキスタン現地にてシステム開発会社を起業/経営して6年目を迎えるJapan Station Technologies代表取締役 江刺家 愛氏にインタビューさせて頂きました。パキスタン現地での起業経験、現場の最前線で日々テック人材と接し、指揮を執る江刺家氏の経験・知見を踏まえて、パキスタンテック企業の競争優位性、取引メリット、潜在課題からその解決策まで貴重な視点をシェア頂きました。
事務局:
簡単に会社/自己紹介をお願いします。
江刺家氏:
パキスタン現地法人Japan Station Technologies (Private) Limitedの創業者で代表取締役社長を務めております江刺家(えさしか)と申します。
弊社は創業以来、日本のお客様のシステム開発に特化して体制を整えてきました。単にシステム開発をするのではなく、日本市場に求められる品質や納期や価格、そしてコミュニケーションの精度を意識しながら、安心して任せていただけるパートナーになることを目指してきました。
長期に渡りお取引をしてくださるお客様方のおかげもあり、弊社も6年目を迎えることができました。
事務局:
パキスタンのテック産業・企業との出会いについて教えて頂けますか?
また、その時の第一印象はいかがでしたか?
江刺家氏:
非常に若くて優秀なテック人材が多いというのが第一印象です。海外留学経験を経て起業をするケースが多いため、インターナショナルスタンダードが身についている人達が多い印象です。
パキスタン政府や公的機関の主要メンバーをはじめとするパキスタンテック業界のパイオニア企業の方々は日本へ最大の敬意を払ってくださりながらも、パキスタンテック業界の一員として外国人女性のわたしを受け入れてくれる寛容さがあります。
日本人が思い浮かべるパキスタンは、イスラム色が強く女性が活躍できない印象かもしれません。しかしながら、女性起業家や女性エンジニアも多く活躍しており、当業界において性差や国のバックグラウンドの違いを感じることはありません。
パキスタンのIT輸出先は米国や英国をはじめとする英語圏、UAEやサウジアラビアなどの中東圏、欧州圏がほとんどですが、パキスタン人を通じて他国のやり方や文化を知ることも多く、他国を通した日本の良さや課題を再発見できるのも大変示唆に富んでいます。
事務局:
日本の同業他社や日本市場におけるオフショア企業等と比較すると、
パキスタンのテック産業・企業の競争優位性はどこにある思いますか?
江刺家氏:
パキスタンにおける最大の魅力は、何といっても“人材のポテンシャルの高さ”にあります。国全体の平均年齢はわずか22歳と非常に若く、活気とエネルギーに満ちあふれています。この若い人口構成は、柔軟性や探求心を持つ人材を数多く輩出する土壌を生み出しています。結果として、国内における人材の競争環境が自然と形成され、優秀な人材を低コストで確保できる状況が整っています。
加えて、パキスタンの若者は新しい技術やトレンドを敏感にキャッチアップし、自ら積極的に学び取っていく姿勢を持っています。その背景には教育環境があります。パキスタンの公用語は英語であり、幼少期から英語を用いた学習を行っています。特に中流層以上の家庭では、海外の大学進学を視野に入れるケースも多く、国際的な感覚を身につけた人材が数多く育っています。そのため、外国人とのコミュニケーションもスムーズに行える点が大きな強みとなっています。
技術面においても基礎力が高く、アルゴリズムや開発フレームワークの理解度に優れた人材が豊富です。英語教育の普及により、海外案件への対応力も自然と養われており、グローバルな環境でも即戦力として活躍できる素地が整っています。
日本人の感覚からすると「本当にそこまで優秀なのか」と半信半疑に思われるかもしれません。しかし実際に彼らと共に仕事を進めてみると、その意欲と能力の高さを確実に実感できるはずです。
事務局:
どのようなニーズや課題を抱える日本の企業に、
パキスタンテック企業を推奨しますか?
江刺家氏:
人材不足に悩む企業にとっては、大きな助けになるはずです。『DX推進や新規サービス開発を進めたいけれど、日本国内だけではなかなか人が集まらない。』そうした状況で、私たちのようなパートナーと組むことで、新しい一歩を踏み出しやすくなります。
また、コストを抑えつつも品質を妥協したくない中小企業にも適していますし、将来的に海外展開を視野に入れている企業にとっても、グローバル感覚を持ったエンジニアとの協働は大きな価値を生むと思います。
事務局:
日本企業との協業における潜在課題として何が挙げられますか?
そのための有効なアプローチ・対策は何が考えられますか?
江刺家氏:
協業において注意すべき点や課題としてまず挙げられるのは、言語や文化の違いです。どうしても避けて通れないテーマではありますが、そこは私たち日本人スタッフがプロジェクトに入り、現地チームとの間でコミュニケーションの橋渡しをすることで解決しています。実際に、文化的な背景や仕事の進め方の違いを理解したうえで適切に調整すれば、大きな障壁になることはありません。むしろ、異なる視点を取り入れることで新しい発想や価値が生まれることも少なくありません。
時差の問題も課題として挙げられますが、こちらについては日本時間で稼働できる専任チームを設けることで対応しています。日本のお客様が「やり取りのレスポンスが遅い」と感じることのないよう、常に安心してプロジェクトを進められる体制を整えています。
さらに品質面についても、多くの企業が「海外に委託すると品質が不安」という印象を持たれるのは自然なことだと思います。私たちはその懸念を払拭するため、日本基準に則ったレビューや検証プロセスを徹底しています。単に納品するだけでなく、細部まで日本企業が安心できる品質を確保することを強く意識しています。
このように、文化・言語・時差・品質といった協業の課題は確かに存在しますが、それぞれに明確な解決策を講じることで、実際のプロジェクト進行において大きな問題となることはほとんどありません。むしろ、お客様にとっては「海外と仕事をしている」という意識を持たないほどスムーズにやり取りできる環境を提供できていると考えています。
事務局:
最後に、パキスタンテック企業との取引を検討されている
日本企業へメッセージをお願いします。
江刺家氏:
日本企業の皆さまにお伝えしたいのは、パキスタンはまだ馴染みが薄い国かもしれませんが、その潜在力は想像以上に大きいということです。特にテクノロジー分野においては、若く柔軟で探求心に溢れる人材が豊富であり、日本企業が直面している人材不足や開発コストの高騰といった課題を解決できる可能性を大いに秘めています。
私たちは単なる外注先としてではなく、同じ目線で課題を共有し、共に未来を描いていくパートナーでありたいと考えています。短期的なコストメリットだけでなく、長期的な信頼関係を築くことで、日本企業の成長を支える存在になることを目指しています。
ぜひ一度、パキスタンの人材やプロジェクトの可能性を体感してみてください。きっと新しい発見があり、日本企業にとって大きな力になると確信しています。
インタビュイー・プロフィール
Japan Station Technologies (Private) Limited
Founder ❘ Chief Executive Officer
江刺家 愛